東京高等裁判所 昭和56年(ラ)203号 決定
記録によれば、抗告人は、同人を債権者・相手方を債務者とする東京地方裁判所昭和五五年(ヨ)第七五三六号動産仮処分事件において、同年一〇月三日保証として、金三〇〇万円を東京法務局に供託し(同法務局同年度金第七五九九四号)、同月四日債務者(相手方)から債権者(抗告人)へ商品・書類等動産の引渡を命ずる旨の仮処分決定を得、同月六日同仮処分決定の執行を完了したものであるが、未だ右仮処分の本案訴訟を提起せず、右仮処分申請の取下もしていないことが認められる。
ところで、このように仮処分事件の本案訴訟が未係属の場合において、民事訴訟法五一三条三項によって準用される同法一一五条三項にいわゆる「訴訟ノ完結」とは、仮処分事件が担保提供者の不利益に終了して、担保権利者の被担保債権の発生が考えられ、その範囲も確定し得る状態になったことをいうものと解すべきである。ところが、本件においては、前叙のごとく動産引渡の断行仮処分の執行が終了しているけれども(もはや右執行解放の余地はない。)、右仮処分申請の取下がなされていないのであるから、右仮処分事件は、末だ担保提供者たる抗告人の不利益に終了したものとはいえない。したがって、抗告人の本件権利行使催告の申立及び担保取消の申立は、爾余の判断をするまでもなく、いずれも失当として棄却すべく、これと同旨の原決定は相当である。
(枇杷田 野崎 佐藤)